テストピース

 このところ新しい釉薬作りに取り組んでいる。候補を6点まで絞り、先日、試験機関に送付した。

 ゼーゲル計算や工房内のテストで、その6点の大まかな性質は把握できている。食器や置物用の釉ならばこの時点で完成ということもあり得るけれども、鍋釉の場合、少なくとも熱膨張データは把握しておかないと不安なので、私は試験に出すことにしている。

 素地と釉との数値データの近似性だけが釉選択の基準になるのではないが、それを無視して釉を選択することもできない。自分がイメージする完成形に近い結果が得られるように、釉の数値データに幅を持たせ、その幅の中で釉を選択することになる。完成形のイメージと釉の数値データに乖離がありすぎると、しばし途方にくれ、また別のアプローチを考える。

 素地と釉の適合性は熱膨張だけに限定される訳ではもちろんない。他にも種々の要求に応じたさまざまな要素がある。けれども、試験には費用も掛かるので、その兼ね合いの中で選択して実施することになる。