搾油行

 先週のことだが、少しドライブして、畑で採った菜種から油を搾ってきた。持ち込んだ24kgのたねから採れた油は約5Lだった。ただし、持ち込んだのは搾油用菜種ではなくて「かき菜」のたねだった。かき菜は、北関東で広く栽培されているアブラナ科の作物で、この辺りでは「あぶら菜」と呼ぶ人も多い。通常は秋にたねを蒔き、春先に伸びてくる花芽を食べる野菜だ。今回、私が持ち込んだかき菜のたねの含油率は21%だったけれども、これが採油用品種の菜種ならば、25%から30%の含油率になるので、より多くの油がとれることになる。

 それでも「かき菜」から搾油するということは私が決めたことで、もちろんそれでよいと思っているのだけれども、当日、搾油機械を操作しながら解説を受け、同じアブラナ科のたねでも、品種や状態に応じて搾油機を調整する必要があることが分かった。その施設では大量の菜種を搾油しており、今回の私のように単発で少量を持ち込む需要に対して機械を再調整することはできないのだと思う。そんなことで、持ち込んだかき菜のたねがその機械の現状の状態に適していない中での搾油作業となった。

 搾油室には、搾油用品種「キラリボシ」のたねが入った30kg袋がいくつも置いてあった。「堀地さんが持ってきたのが搾油用菜種だったら、とっくに搾り終わってるよ」との搾油施設のKさんの言葉に、ふとキラリボシのたねを蒔いてみたくなった。そこで、お土産を余分に手渡し、「これと交換で、このたね少しもらえないかな?」と聞いてみた。すると「このタネはうちのだからいいよ」と、Kさんがキラリボシのたねを分けてくれたのだった。キラリボシは、含油率25~30%無エルカ酸、低グルコシノレート品種で、しかも分けていただいたのは無農薬栽培のたねだった。

 国内産菜種についていえば、近年では無エルカ酸菜種の栽培が主流を占めているいるようだ。大量に摂取すると心臓に良くないというエルカ酸の情報や、従来品種の菜種にエルカ酸が含まれているという情報があることは、その真偽はさておき、私も知っているが、ずっと食べられてきて問題なかったモノが、どのような経緯で体に悪いということになったのか・・・。世の中をあまり信用していない私は、エルカ酸を否定する根拠もあまり信用していないので、以前から食べられている「かき菜」に惹かれる。

 かき菜は他の菜花と交雑しにくい性質を持つので、自分の畑でたねを採り続けられることと、野菜として花芽を食べた後にたねを利用できるというメリットがある。一方デメリットは、採油用品種と比べて含油率が少ないということだろうか。けれどもこれはかき菜のデメリットというよりも近年の採油用菜種品種のメリットといった方が適切だとも感じる。私の場合は、そも自家消費用の油なのだから、もとより可も不可もない。そんなことで、分けていただいたキラリボシも蒔くとは思うけれども、かき菜からの採油は今後も続けると思う。

 一方、いま日本で流通している菜種の多くは、海外産の遺伝子組み換え作物(GMO)の無エルカ酸キャノーラ品種「ラウンドアップ・レディーに属するものが主流のようだ。大量に輸入されたこの菜種は油に加工され、人々がその油をさまざまな形で日常的に体に入れているという現実がある。そして日本では菜種油に遺伝子組み換え食品の表示義務は無いという。

ラウンドアップ・レディー(Roundup Ready, RR)品種 – グリホサート耐性。米国モンサント社(2016年にバイエルが買収)が開発した、除草剤(商品名:ラウンドアップ)耐性農作物の総称。(ウィキペディアより)

 世の中をあまり信用していないと私は先述したけれども、ラウンドアップ・レディー」というその名前から、品種改良の理由やその成り立ちも推して知るべきだろうと思う。

 搾油所のKさんとの再会や、搾油施設のお隣のパン屋さんの美味しいパンが食べられたりと、ここに通って油を搾る楽しみもある。